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最高裁判所第一小法廷 昭和46年(オ)188号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人石川浅、同斉藤暢生の上告理由について。

利息制限法三条の規定するところによれば、金銭消費貸借に関し債権者の受ける元本以外の金銭は、何らの名義をもつてするを問わず、利息とみなされ、ただ、契約の締結および債務の弁済の費用はこの限りでないとされているが、そのいわゆる費用は、債権者が真実支出したものに限られるのであつて、たとえ費用の名義で受けた金銭であつても債権者が現実に費用として支出しなかつたものは、利息とみなされると解すべきである。しかるに、所論の費用名義の一〇万円を実際に契約締結の費用として支出した事実は、原審において、上告人の主張立証していなかつたところであるから、右一〇万円を天引された利息とみなして同法二条に基づく充当計算をした原審の判断に、所論の違法は認められない。論旨は、ひつきよう、原審で主張しなかつた事項に基づき原判決を非難するものであつて、採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 大隅健一郎 裁判官 岩田 誠 裁判官 藤林益三 裁判官 下田武三 裁判官 岸 盛一)

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